別寝室-理想と現実

同寝室は息苦しい・・・でも完全別寝室というのも・・・両者のメリットを上手に取り込む間取りとは

前ページに引き続き、ここでは、同寝室・別寝室の理想と現実、メリット・デメリット、そして、両者のメリットを取り込む方法について詳しく見ていきたいと思います。

心の中では別寝室を望む方が意外と多いということが合わかっています。
しかし、不仲説、イメージの悪さなど、別寝室に対する不安が強いのも現実・・・仕方なく同じ寝室で寝るのですが、そのことが見えないストレスをじんわりとため込む原因になってしまっている可能性があります。

同寝室だけが絶対の正解ではありません。
夫婦別寝室の良いところにも目を向け、あなた方夫婦にとっての最適解を導き出すためのプランニングのコツをいっしょに考えてみましょう。

夫婦が実際どのように寝ているか

さまざまな統計から、日本の夫婦の約8割近くは一緒の部屋で寝るということがわかっています。

しかし、口には出さないけれど、本当は別々に寝たいという思いを持っている夫や妻が実は少なくないという、興味深いデータがあります。

大きく分類すれば少数派ということになるのですが、これらを無視してしまうのはあまりにも数字が大きすぎます。
では、どの程度希望と現実が一致しているのか・・・具体的に以下の文献のデータをもとに別寝室の理想と現実をくわしく見ていきたいと思います。


これ以下に示すグラフは、1990年以降に分譲された全国9地区の住宅団地に建つ2階建て独立住宅337件について調査研究を行った下記文献のデータに基づき、当サイトでわかりやすく作成したものです。

日本建築学会計画系論文集Vol. 76 (2011)
夫婦の就寝形態の特徴と寝室・私的領域の計画課題について 現代における住宅計画のための室要求構造の解明に関する研究 その3
切原 舞子, 鈴木 義弘, 岡 俊江
調査対象20代~70代の夫婦337組

夫婦同寝室・別寝室の実態

まず、同寝室と別寝室・・・実際に夫婦が寝ている割合についてに見てみます。
夫婦同寝・別寝の実態-8割近くが夫婦一緒の部屋で寝ている
夫婦が一つの部屋で寝る「同寝室」が77.7%、一方の別々の部屋で寝る「別寝室」が22.3%となっており、約8割の方が夫婦一緒の部屋で寝ているというのが実態です。

制約がなければ夫婦は本当はどのように寝たいのか?

それでは、上記の現実とは別に、心の中ではどう思っているのか・・・つまり、「本当は一緒に寝たいのかどうか」という希望についての調査結果を見てみましょう。
上記の実態のグラフと対比させて見てみます。

夫・妻ともに別寝室を希望する人が多い

夫婦の就寝形態―理想と現実-特に妻の別寝室希望が強い(約半数)
室数や面積などの制約がなければどのように寝たいかの希望を調査したところ、別寝希望(時々一人で寝たいなどを含む)が実態よりも多いという結果が示されています。

理由としては、「いびきや寝相を避け安眠したい」「就寝時間の違い」「自分のプライバシーな時間が欲しい」などが挙げられており、特に、妻の場合は45.7%と、夫(34.1%)よりもその数が多くなっています。

さらに妻のうち、同寝室希望者(42.7%)よりも別寝室希望者(45.7%)の方が多く、妻の約半数が別寝室を望んでいるという結果です。

もはや、心の面では少数派とは言えないほどの数字であり、その欲求の強さがうかがえます。

夫・妻の夫婦寝室に対する希望はどの程度かなっているのか

さらに、希望がどの程度かなっているかを夫と妻の別にそれぞれ比較したのが以下のグラフになります。

■夫婦寝室の希望と実態との差(夫の場合)
夫婦寝室の希望と実態との差(夫の場合)-同寝室希望者よりも別寝室希望者の方が、願いが叶わない割合が高い
■夫婦寝室の希望と実態との差(妻の場合)
夫婦寝室の希望と実態との差(妻の場合)-特に妻の別寝室希望者は、願い通りにならない割合が高く、希望者の6割に達する
まず、夫・妻ともに願いどおりになっていない方が意外と多く、希望する就寝形態になっていない割合は、夫(21.1%)、妻(30%)という結果です。

また、同寝室希望者よりも別寝室希望者の方が希望通りになっていない傾向が夫・妻ともに強く、別寝室で寝たい人の半数以上が本意ではない同寝室で寝ているということがわかります。

特に、妻の場合は別寝室希望者の6割以上が、本意ではない同寝室で寝ているという結果です。
「本当は夫と別に寝たいのに・・・」それがかなわない妻の割合が6割・・・妻全体の割合でいうと28.5%ですが・・・これを全く無視してしまうのはどうなのかという数字です。

こういった、希望を全く無視してマイホームを計画するのではなく、できればそれらの希望に配慮した間取りにしたいところです。

間取りは、建ててからでは修正が難しいので、言いたいことははっきり相手に告げる、あるいは、相手の気持ちを引き出しながら話を詰めておくことが大切ですね。

別寝室希望を考慮した間取りのために考えておくべきこと

さあ、別寝室を希望する方が意外と多い事実がわかりましたが、夫婦どちらかがそれを希望している場合、これを間取りにどう反映させればよいのか・・・そのヒントについて考えてみましょう。

もちろん、今は同じ寝室がいいと思っている人も、将来それが変わる可能性もありますので、このことを頭の片隅に置いていただければと思います。

ただ、別寝室を想定した間取りを考えるといっても、寝室の数を二つ用意すればいいといった単純な結論にはならないものです。
他の諸室への要望があったり、面積・金額の制約もありますので、なかなか希望通りにいかない難しさがあります。

その中で、別寝室において考えておきたいということを2つ上げておきます。

1.同寝室・別寝室のメリット・デメリット

具体的なプランを決めるにあたって家族で話し合う時のために、同寝室・別寝室それぞれのメリットデメリットについて整理してみます。
自分たちにとっての優先事項は何か・・・プランに盛り込むかどうかの妥協点を探るための材料にしてください。

メリット デメリット
別寝室
  • 自分の熟睡できる環境にできる
  • プライベートな場所と時間が保てる
  • 夫婦間の適度な距離感・円滑性のバランスがとれる
  • 寝室の所要面積が多くなる
  • コミュニケーションの密度が下がる
  • 別寝室という事実が夫婦疎遠感のイメージを生む
  • 相手の体調変化など緊急対応できない
同寝室
  • 寝室の所要面積を最小限にできる
  • コミュニケーションの密度が上がる
  • 同寝室という事実が円満感を生む
  • 相手の体調変化など緊急対応ができる
  • 自分の熟睡できる環境としにくい
  • プライベートな場所と時間をとりにくい
  • 夫婦間の距離をとりにくい

このように、同寝室と別寝室はメリット・デメリットが相反の関係にあります。
このように抽出・視覚化することによって、あなたにとっての大切な価値を見出すきっかけが生まれる場合があります。

この点を踏まえ、夫婦の円満性を保つための部屋の使い方などをよく話し合っておくべきでしょう。

2.夫婦関係は時とともに変化する

同寝室・別寝室を考えた計画の難しいところは、時とともに希望が変化するということです。

最初は一緒に寝たいと思っていても、子供との添い寝期間などもあったり、夫婦互いの感情が時とともに変遷していき、常に一定ではないのです。

特に、

  • いびきがうるさい
  • 真っ暗でないと眠れない
  • 薄明かりがついていないと眠れない
  • 夜中に本を読みたい、テレビを見たい
  • テレビをつけられると眠れない
  • ベッドはよく眠れない(畳がいい)
  • ・・・

こういったことは、年を重ねるほど強く感じ、別寝室への希望へと変化していきます。

子どもと添い寝をするのがきっかけで、別寝室の快適さに気づいたが、また、夫婦同寝室に戻るという方も多いでしょう。

一方、夫婦互いの合意があり、別寝室で寝ていたが、あるときから相手の病気により体調変化に気付けないのが不安になる、あるいは、自分が不安を感じたときに、そばに頼れる人がいないのは不安・・・など、やっぱり同寝室が良いと感じる状況変化もあり得ます。

さらに、別寝室は不安だけど、同寝室もストレスを感じる・・・その中間くらいがいいといった夫婦間の温度を保ちたい時期というのもあります。

そういった時期・状況による変化が伴うものですから、最初の感情だけで間取りを確定してしまうのは、後のストレスを生む場合がありますので、さまざまな変化にフレキシブルに対応できるように仕込んでおくという考え方も大切になってきます。

では、以上を踏まえ、同寝室と別寝室のメリットを取り込み、デメリットの解消もできる、さらには、夫婦間の要望変化にも対応できる具体的な間取りの例について見てみます。

さまざまな別寝室に対する要望に対応できる間取りの例

以下の間取りの特徴を端的にいうと、同寝室と別寝室のいいとこどりをした「セミ別寝室」というものです。

夫婦の主寝室はいらない・・・夫・妻のそれぞれの趣味室を兼ねた寝室を設け、それぞれの部屋を完全に間仕切るのではなく、ソフトに区切る。」というのがコンセプトです。

例としては、2人暮らしを想定した平屋の間取りの例ですが、あくまでもパーツや考え方について、みなさんの計画する間取りに組み込めるかどうかの参考にしていただければと思います。

セミ別寝室-引き戸の開閉により、いつでも同寝室と別寝室の切替えができ、夫婦間の距離も調整できる。
セミ別寝室の特徴

独立した2室間に設けられた引き戸の開閉により、同寝室と別寝室の切替え、さらに、夫婦の間の距離感を調整できる。

メリット
  • 同寝室・別寝室両方のメリットが得られる
    同寝室のコミュニケーション性、別寝室のプライバシー性・・・これらのメリットを両立することができます。
  • 変化に対応しやすい
    「一室で寝たい」、「別室で寝たい」、「その中間くらいがいい」といった、年数を重ねるごとに変化する夫婦の希望にも、引き戸1枚でいつでも対応させることができます。
  • 引き戸の開き加減で距離感を調整できる
    引き戸の開き加減を調整することで「寝ながら会話したい」「寝息だけ聞こえるようにしたい」「いびきは遮断したいが、声は届くようにしたい」といった夫婦間の微妙な要求にも調節ができます。

  • 一つの部屋で一緒に寝る
  • 離れて寝る(引き戸を閉める)
  • 着かず離れずの距離で寝る(引き戸を開ける)

長い夫婦生活・・・この3つの就寝パターンを行ったり来たりすることもあるわけで、それが負担なく切り替えられるというのは一つのメリットといえるでしょう。

上図は、各室からトイレ・洗面へそれぞれアクセスできるようになっていますが、このように生活動線が独立していることが基本です。
その上で、2室間に引き戸を設けることで「セミ別寝室」となります。

10年後、20年後の夫婦関係を完全に予想することは難しい場合もあります。
セミ別寝室とは、就寝形態の不確実性という問題をフレキシビリティー(柔軟性)によって対応しようとした一つの解答です。

このような題材を元に、夫婦間でどのような間取りのあり方がいいのかを話し合うきっかけにしてみると良いのではないでしょうか。


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まとめ

夫婦一緒に寝ることの大切さもありますが、一緒に寝ることが目的化しては意味がありません

そもそも、一緒に寝ることが目的ではなく、夫婦円満・家族円満で健康的に暮らすというのが目的のはずです。
そのためには、最初から主寝室というものが必要ないという解答も、夫婦によってはあり得るのです。

その答えを見つけるために避けては通れない視点を整理します。

夫婦寝室の計画において考えるべきこと

  • 「本当は夫婦別寝室がいい」という欲求は根強い
    「別寝室はいけない」「夫婦は一緒に寝るもんだ」と固定化して考え、見えないところでストレスをためるといった旧来的な価値観に縛られないことが大切。相手の本心に気付いてあげましょう。
  • 夫婦関係は変化する
    家族構成や夫婦関係は、新婚から介護に至るまで、時の流れとともに変化します。今は同寝室がいいと思っているあなたも、15年後は別寝室がいいと変わるかもしれません。そして、夫婦互いに希望が一致しないことも十分想定されます。そういった変化への追従性も多少は考えておくのがよいでしょう。

上の図では、同寝室と別寝室のそれぞれいいところを組み込み、時とともに変化する夫婦の要求にも負担なく対応できる間取りとして一つの案を示しましたが、夫婦・個人の多様な価値観に柔軟に沿わせるという発想を欠かさないことがとても大切といえます。

特に、住宅に無駄に費用をかけないようにする工夫は、老後資金などを含めた投資的観点からも無視することはできません。
無駄に一部屋つくってしまえば、それにかかるローン金利、維持費、固定資産税を営々と負担しなければならないのですから・・・。

理想の間取りはあなたが決める

ハウスメーカーが用意する間取りは、最大公約数的な間取りです・・・決してあなたに合っているとは限りません。

「夫婦別に寝たいなんてハウスメーカーに言えない・・・」と、へんな見栄を張って意思に反して一緒に寝るより、「別寝室だけど、夫婦はとっても円満」と堂々といえることの方が正解なのではないでしょうか。

このページでもし、なにか「ピン」とくるものがあれば、あなたがた夫婦にとっての間取りの理想が浮かび上がってきているはずです。
住みやすく、費用負担のない、夫婦・家族が幸せに暮らせる間取りをみつけていただきたい・・・心からそう願っています。

なお、上記の例では、子供の添い寝という時代変化を想定していませんが、それらも考慮した間取りについても考察していますので、必要に応じて参考にしていただければと思います。(現在工事中)