
住宅会社の一括資料請求サービスは、はたして消費者の役に立つものなのでしょうか。ここでは、間取りプランを提供してくれるという一括依頼サービス タウンライフ家づくり について詳しく検証したいと思います。
プロの間取りと見積りがインターネットでかんたんに得られるのであれば、非常にありがたい話ですが果たしてどうなのでしょうか・・・そんなうまくいくのでしょうか。
実際に利用した結果も含め、建築士の立場でお伝えしたいと思います。まずは結論から。

えー。ワンクリックで各社の間取りと見積りがズバッと届くのではないのですか?

ワンクリックで提供してくれる会社もあれば、そうではない会社もあります。

「ワンクリック」で送るという約束なのでは?

いいえ。確かにそれが理想として前提にあるサービスなのですが、資料の送付方法については、ハウスメーカー独自のやり方で行われます。

そうなんですか。。。

実際に依頼した結果を踏まえ、このサービスを詳しく解説します。
「目次」間取り提案 無料一括依頼サービスの検証
1.サービスの仕組みは?
まず、このタウンライフ家づくりの資料請求の仕組みを見てみましょう。かんたんにいうと、タウンライフ家づくりは消費者とハウスメーカーをつなぐ仲介サービスといえます。
上図のように、間タウンライフ家づくりのホームページで1度依頼するだけで、あなたが選んだ地元のハウスメーカーに一括で資料請求ができるという仕組みです。
2.このサービスのメリットは?
次に、このサービスのメリットについて整理してみます。
依頼の負担が少ない
間取りの条件等を入力、好みの住宅メーカーを選択し、クリック一つで見積りと間取り作成を同一条件で依頼できます。
住宅展示場に出向く必要なく、自宅にいながら簡単に依頼ができ、各社と対面しながら同じ条件を何度も説明しなくて済むため、時間の浪費や精神的負担を減らすことが期待できるというものです。
間取り図が届く
間取り図(ラフプラン)作成の依頼がインターネットからできるというのがこのサービスの最大の特徴といえるでしょう。
ただ、本来は、間取りというのは、以下のようにお客さんの住まいに対する思いや不安を聞き取りながら条件を価格制役の中で調整する必要があり、たった一度インターネットで依頼するだけで、簡単にできあがるようなものではありません。
■一度の依頼で間取りはできない

よって、希望にそって作成された間取りといっても、改善の余地が多分に含まれる「たたき台」と思っておく必要があるでしょう。
ただ、たたき台であっても、その間取り図が各社で比較でき、価格もあわせて比べられるとなれば、家づくりのスタート段階としては、それなりの検討材料として期待はできそうです。
3.実際にサービスを利用してみたところ・・・
では、実際はどうなのでしょうか・・。何事もやってみなければわからない・・・ということで実践です。
実際にタウンライフ家づくりに依頼をしてみました
まずは、こちらから予定の地域を選択し、依頼ボタンを押します。
次に、入力フォームにそって記入していきます。まずは、希望の住まいの大きさ、LDKタイプなどを入力します。

次に、間取りの要望事項を入力します。また、土地の図面があれば添付しましょう。
土地情報について
土地の情報(寸法・前面道路の方位がわかるもの)がなければ、現実に即した間取りがかけませんので、必ず明記するようにしましょう。土地の図面があればそれを添付します。または、「南道路8m、間口10m、奥行き20mの長方形。」といったように、寸法と道路の方位を記載しましょう。
※今回は以下の土地の図面を添付しました。

次に、自分の連絡先などを入力、「個人情報の取り扱い及びご利用規約」に同意し、会社選択ページへ進みます。

最後に、依頼したい会社にチェックを付けて依頼ボタンをクリック。

これで申し込みは完了です。


3日後・・・
1番早いハウスメーカーから間取り図(ラフプラン)が電子メールで届きました。なかなか早いですね・・・。

その後も、他のハウスメーカーからプランが届きました。
送付される資料は各社によって違う
しかし、残念ながら、見積書は3社中1社しか送付してもらえませんでした。間取り図は3社中2社です。
一度のアクションで得られる資料は、各社によって異なるということがわかりました。
間取り図が届かなかったハウスメーカーのメールには、「もう少し具体的にお話をお聞きした上で、資料を作成させていただきたい」という趣旨のことが書かれていました。
それでは最初の依頼は何だったのか・・・という気もしますが、まあ、ハウスメーカー側にとっては、詳細な要望内容やお客さんの本気度が見えない状態で、本腰も入れられないという事情も分かります。
依頼が一気に集中したという場合や、支店の担当者が忙しすぎて対応できない……また、依頼の内容がアバウトすぎて間取りをかきたくてもかけない……ということもあるでしょう。
このあたりは、利用規約上も、ワンクリックで返す義務まではないので、ハウスメーカー次第ということになります。
見積書はめやす程度
見積書は概算レベルなので、詳細を詰めていくうちに、工事費がどんどん膨らんでいく可能性は否定できません。なので、あくまでも目安と捉えた方が良いでしょう。
間取りはそれなりの検討材料にできる場合も
ハウスメーカーと一度も打合せをせずに作成された間取り図(ラフプラン)ですから、資料の価値に大きなものは期待できません。ただし、こちらの希望を踏まえて作成してくれたものであれば、検討材料の一つとして活用できそうです。
本来は、比較材料としての間取りには、大きく2つの役割が期待できます。
- 応答性で、ハウスメーカーの信頼度・相性がチェックできる
間取りの要望に対して、期待以上の提案があるのかどうかをチェックできます。…どれだけ心を砕いてくれたのか…プランにワクワクするものを感じたか・・・これは長い家づくりにおけるパートナーを選ぶ視点としてとても大切です。 - 自分で考えるよりも早く検討が進む
施主のイメージだけで間取りを考えようとすると、絵に描いた餅から抜け出せなくなる場合があります。希望に応じて作成されたプロの間取りを検討の基礎にすることで、議論の空転を防ぎ、現実に即した観点で改善案や新たなアイデアをスムーズに取り入れられるので検討速度が上がります。
以上のような効果を十分に期待するのは難しいですが、たたき台なりの効果はある程度は期待できるでしょう。
では、そのあたりを実感していただくため、実際に提案してもらった間取りを比べてみます。こちらの要望がどれだけプランに反映されたのかという視点でプランをチェックしてみましたので、参考にしてみてください。
4.各ハウスメーカーの間取りを比較!
それでは、実際に提案していただいたプランについて比較してみましょう。私の方で間取りを写し書きし、解説を加えました。
ちなみに、依頼時に入力フォームに記入したプランに対する要望は以下の通りです。
■間取りの要望事項
- 世帯数:1世帯住宅
- 階数:平屋建て
- 人数:大人2人、子0人
- LDKタイプ:2LDK
- 家の広さ:25坪くらい
- LDKの広さ:15畳くらい
- 水周り:使い勝手を重視したい
- その他間取りに対する希望(自由入力)
・玄関とキッチンの両方からアクセスできる納戸(パントリー)が欲しい(1坪くらい)。
・洗濯物が干せる屋根つきのウッドデッキ(2坪くらい)が欲しい。
・2つの洋室の内、1つの洋室から洗面やトイレにすぐアクセスできる間取りにしたい。
この内、以下の3点の要望の達成度について、検証したいと思います。
要望②:玄関とキッチンの両方からアクセスできる納戸(パントリー)が欲しい(1坪くらい)。
要望③:2つの洋室の内の1つから洗面やトイレにすぐアクセスできる間取りにしたい。
案1 ハウスメーカーⅠプランチェック
案2 ハウスメーカーSプランチェック
比較結果
要望の②「玄関とキッチンの両方からアクセスできる納戸」については、重たいお米やお酒、飲料水や常温保存の食品を玄関からすぐに搬入でき、それをキッチンからすぐに取り出せると便利なので、そのような意図で要望したものです。
これについては2案目のハウスメーカーSの方が使い勝手が良いのがわかります。
また、要望③「洋室から洗面やトイレにすぐアクセスできる間取りにしたい」については、高齢になった時、夫婦のどちらかが、頻回なトイレ通いや、介護・介助などがしやすいよう、寝床からトイレ・洗面・浴室にすぐに行けるようにしたいという意図で要望したものです。
これについても、2案目のハウスメーカーSの方が使いやすいのが明らかですね。
「施主の満足とは何か?」を真剣に考え、要望の意図や真意をくみ取る姿勢はハウスメーカーSに軍配がありそうです。このように、全く同じ条件で依頼しても、プランや要望に対する応答性が大きく違うことがわかります。
ラフプランでもそれなりのものが見える
ラフプランであっても、なんとなくですが、各社の姿勢や思いの違いだったり、依頼先にふさわしいかどうかを直感として感じ取る材料にできるものです。
それは、間取りというのは、言葉では伝わらない、人の心をグッとつかむような説得力を発揮することがあり、それがそのまま契約相手としての信頼性の評価に通ずる場合があるからです。
例えば、会社や担当者によっては「お願いしたことが図面や現場に全く反映されていない・・・」といったことが、現実には、たびたび繰り返されます。そのような、言われてから直すような相手では、不満足な結果につながるおそれが高いでしょう。
1を聞いたら、どういう不安や思いがあるのかを鋭く読み取り10を返す…そうした、あなたの思いにフィットさせる提案力、きめ細かさがあるのかないのか…企業ブランドやデザインにとらわれない、こうした視点が、あなたの満足度に大きく関わることを覚えておきましょう。
5.面倒な営業トークはないの?
いきなり同時に電話がかかってくるのでは?
いきなり一気に電話が来ることはありません。
中古車買い取りの一括見積りサービスのように、申し込んだ瞬間に一斉に電話がなるということはありません。(それらの業界は、最初に電話をつないだ会社が高い確率で成約する・・つまり早い者勝ちの勝負だからです。)
住宅の購入や契約は、早い者勝ちの世界ではありませんので、いきなり電話がなるなどはありません。
営業の電話はないの?
今回は、電話連絡もなく、まず最初に電子メールで間取りプランが届きました。ご興味があれば、ご検討くださいといったスタンスですね。ハウスメーカーからの営業電話は全くありませんでしたが、このあたりは、各業者で温度差があるところだとは思います。
「連絡はメールのみ希望」と申込時に伝えても、その通りにしてくれるハウスメーカーもありますが、それでも電話連絡してくるハウスメーカーはいます。ハウスメーカーとはそういうものだと思っておくのがよいかもしれません。
必ず話を聞かなければいけないの?
このサービスは、ハウスメーカー各社に同時に希望や連絡先を伝えてもらうというだけのものであり、利用者が、それとひき換えに負う義務はありません。その後のハウスメーカーとの交渉については、全く一般的な形と同じですので、あなたが望まない限り、話を聞く義務、契約の義務などはありません。
しかし、間取りなど資料作成にはそれなりの労力を要しますので、提供してもらったことに対する感謝の気持ちは機会があれば伝えるようにしたいものです。
費用はかからないの?
サイト利用料、資料代など一切費用はかかりません。ハウスメーカーに話を断っても何かを請求されることもありません。また、ハウスメーカーと契約となったとしても、仲介手数料といった費用もかかりません。
個人情報は必要ですか?
個人情報を伏せての利用はできません。タウンライフ家づくりの運営会社と、ハウスメーカー各社に対して個人情報が伝えられることになります。
利用規約
個人情報保護方針

個人情報を伝えずに利用はできないのですか?

そこは、仕方がありません。名前も知らない人に無料で間取りを作成してくれる会社はありませんので、サービス自体が成り立ちません。どのような接触方法をとるにせよ、個人情報を伏せたままハウスメーカーと具体的な話は進められませんので、どこかで覚悟は必要ですね。

ハウスメーカーに断るときは、タウンライフ家づくりが代わりにで断ってくれるのではないのですか?

いいえ、ハウスメーカーに対して何かを断る必要が生じた場合は、自分で直接断ることになります。

わかりました。あくまでも、ハウスメーカーとのやりとりは、一般的な形と同じなんですね。
6.まとめ 過大な期待はできないが間取り図は使えることもある
無料サービスと割り切る
前述のように、各社によって送付資料の対応が異なるという面がありますので、無料サービスにあまり大きな期待をしないということが肝心です。
ハウスメーカーの熱意のある提案をひきだすには、あなたの興味がある程度ハウスメーカに伝わる必要がある・・・そういう世界なのです。
むやみやたらに依頼会社を多くするのではなく、本当に興味のあるハウスメーカーに絞って依頼をするなど節度を保って利用するのがよいでしょう。
間取りをすぐに送ってくれるハウスメーカーもある
やはり、あなたの要望に応じた間取りプランがワンクリックで届くというのは、家づくりのスタートとしては非常にありがたいことです。
現在、インターネットの一度の申し込みで間取りプランを提供してくれる一括資料請求サービスはタウンライフ家づくりだけです。
■資料請求サービス比較表
資料請求サイト | |||
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手軽さ | |||
カタログ | |||
登録業者数 | |||
特典 | はじめての家づくりノート | 成功する家づくり7つの法則 | ― |
間取り図 | ― | ― | |
見積り | ― | ― | |
土地提案 | ― | ― | |
リフォーム | ― | ||
解説 | 手早くカタログのみ取り寄せられる。各住宅会社のデザインや性能、概ねの価格を把握できる。これから家づくりを始める方向け。 | 間取り、見積り、土地提案が自宅でもらえる。カタログだけではなく具体的な検討も進めながら情報収集したい方向け。 | 登録業者数が圧倒的。住宅会社をさらに探す場合に向く。 |
最初のハウスメーカーとの接点の一つになりえる
直接各会社に対し自力で依頼するのは、かなり気が重く、営業マンに押され続ける状況では、人は冷静な判断がしにくいのは事実です。
そうしたストレスを無意識に回避するように、いつのまにか話を進めてしまい、印鑑を押した後に、「あれっ、ちょっとまてよ」とならないよう、家づくりの初期の段階では、心に余裕をもってじっくりと判断するということがとても大切です。
このサービスは期待どおりにいかない面もありますが、「どこかでハウスメーカーと接触機会をもちたい…しかし、今は自分のペースは崩されたくない。」…そういう方にとっての情報収集方法の一つになりえるでしょう。
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